Phd graduate in 24 years

ネガティブで先延ばし癖のある私が文系博士課程の大学院生として生きた証。D1年目。

ALACTモデルの原著を読んだ

今更だけど,ALACTモデルの発端であるKorthagen(1985)を読んだ。

 

教師教育領域で有名なALACTモデルとは,省察の理想的な過程を示したサイクルモデルで,以下の5段階からなる。

A:行為(Action)

L:行為の振り返り(Looking back on the action)

A:本質的な諸相への気付き(Awareness of essential aspects)

C:行為の選択肢の拡大(Creation of alternative methods of action)

T:試行(Trial)

※各段階の訳は,2010年の翻訳版を参考にしています。

最後の「試行」が1つ目の「行為」に直結していて,サイクルをぐるぐる回していくなかで,教育実習生が,自律的に経験から学ぶことが目指されている。

 

大体みんな読んだり,引用したりしてるやつが2010年の翻訳版で,

 この原著が2001年。

 

 

この本は,ALACTモデルを中心として,教員養成での省察の理論と実践についてまとめてあるんだけど,実はここでALACTモデルがはじめて登場したわけではなく,すでに1985年の論文で登場している。

 

Korthagen, F.A.J. (1985) Reflective Teaching and Preservice Teacher Education in the Netherlands, Journal of Teacher Education, 36(5), pp.11-15.

 

正直,ALACTモデル(コルトハーヘン,2010)とか,ALACTモデル(Korthagen,2001)って紹介するのはどうなのかな,とか思ったりもする。

 

まあ,5ページのペーパーなので,モデルの詳細な説明がしてあるというよりも,紹介という感じ。だから,ALACTモデルについて網羅的に知る上では2010年版が良いと思うし,原著の全章が翻訳されているわけではないので,より理解を深めたい人は,原著に当たればいいと思う。

 

前置きが長くなったけど,今回読んだ論文は,

『オランダにおける省察的教育実践と教員養成』というタイトルで,オランダの教員養成機関でのプログラムについて,

①プログラムの構成

②プログラムの基盤にある学習理論

③プログラムの成果

が紹介されている。

 

教壇実習の事前に省察について学ぶ1年次実習と,

教員養成機関(大学)の教員から指導を受ける2年次〜の教壇実習,

実習協力校(中学校)での指導教員から指導を受ける3年次・4年次実習がある。

 

「プログラムの基盤にある学習理論」として,ALACTモデルが示されている。

 

プログラム卒業生に対する質問紙調査の結果,

省察を全面に出した調査ではなかったにもかかわらず,半数以上が,省察的教育実践の学習成果や,省察的教育実践が自身の成長を方向づけていたことを報告した。

△半数以上が,しつけや動機付けなどの問題について,教員養成の段階では十分に準備することができなかったと報告した。

ことが明らかになったので,さらにインタビュー調査を実施した結果,

省察的な態度を身につけた学生にとってはプログラムは適していたが,そうでない学生への効果は低かった。

省察的な態度を身につけた学生でさえ,教員1年目ではあまり効果を感じられなかった。初任時は葛藤の連続なので,省察をすることができないが,徐々に経験から学ぶ力を取り戻した。

ことが明らかになった。

 

最後に,教壇実習前や,卒業後→初任での移行ショック時における教師教育者→教育実習生への支援や,教育実習生の個に応じた支援の必要性などについて提言がされていた。

 

雑感

・inquiry orientationやreflective atitudeなど,志向や態度について書いてあったのが印象的だった。

・Korthagenの他の論文や他の研究で言及されているとは思うけど,教育実習生のパターン分けや,省察の断念・挫折から,省察する力を取り戻すまでの過程が単純化されているように感じたので,より詳細な検討や,中長期的な過程がわかったらいいなと思った。

・教育実習での指導に関して,大学教員と協力校の指導教員の連携の仕方が難しいよなあ・・・。日本における教師教育者の立ち位置の確立と,諸外国の研究知見をどう取り入れるかがこれから大切だなあとおもう。

 

個人的には,コルトハーヘンきっかけで,省察を学んだようなものなので,もし興味あったら読んでみてください。

 

 

おわり。